春が近づき暖かくなってくると、スギ花粉による“花粉症”に苦しむ人が増えますよね。
その一方で、猫にも花粉症が存在するのを知っていましたか? 人間と同じような点と異なる点があるそうで、獣医師の西原克明先生に詳しく解説いただきました!
目次
■猫にも多く見られる『アレルギー性皮膚炎』

猫も人や犬と同じように、アレルギーを引き起こすことが知られています。その中でも、動物病院でよく見かけるのは“アレルギー性皮膚炎”と呼ばれ、首の周りやお腹を中心に、体のあちこちが痒くなり、皮膚炎を引き起こすようになります。
このアレルギー性皮膚炎を引き起こす物質は、様々なものが知られていますが、代表的なものには、猫に寄生するノミによるアレルギーと、食べ物によるアレルギーがあります。
■猫にも花粉症はあるの?

しかし、猫のアレルギーの中には、ノミや食べ物以外にも、ハウスダストや花粉が原因でアレルギー症状が見られるものもあります。
その中でも花粉によるアレルギーは、人ではスギ花粉による花粉症が非常に有名で、ご存知のように、目のかゆみや鼻のムズムズ感、さらには目やに、鼻水、くしゃみなどが見られるようになります。
猫にも同じようにスギ花粉をはじめ、植物の花粉によるアレルギーはあります。しかし、その花粉によるアレルギーは、猫のアレルギーの中でも人間ほど多くは無い様に思われます。
また症状も上記のような人間で見られる鼻炎や結膜炎以外にも、皮膚にかゆみが見られることも多く、その症状は人間よりも実に多様です。
そのため、皮膚の痒みだけだと、一見花粉によるアレルギーとは気づきにくいため注意が必要です。
■アレルギーを疑う時に注意したい病気

もし、あなたの猫が目を擦ったり、鼻水やくしゃみが出たり、あるいは体を痒がったりするといった「アレルギーかな?」と思われる症状が見られた場合は、他にもウイルスによる伝染病や寄生虫感染による症状も考えられるため、必ず動物病院を受診して診断を受けるようにしてください。
万が一ウイルスや寄生虫を見逃してしまうと、症状が悪化することはもちろん、周辺に病原体を撒き散らす可能性もあります。様子見をせず、かかりつけの獣医師に相談するようにしてください。
■猫の花粉症は血液検査で調べることが可能

猫の花粉症は、そのほかのアレルギーを引き起こす物質を含めて、血液検査で調べることができます。
以前は、猫のアレルギー検査といっても、人間や犬用のものを使用していたため、精度が低く、なかなか現実的に利用することが難しかったのですが、近年は、猫に特化したアレルギー検査が開発され、より精度の高い検査ができるようになったと感じます。
しかし、精度が高くなっても、決して100%というわけではありません。実際にアレルギーの診断をする時には、血液によるアレルギー検査に加え、症状が出る時期や症状の重さ、食べ物に対するアレルギー症状の有無など、様々な情報を踏まえて総合的に診断することが重要です。
■猫の花粉症の治療はステロイドを使用することも

猫の花粉症は、猫自身がアレルギー体質のため完治させることは非常に難しいです。そのため、花粉症の症状がひどい時には、基本的には根治療法ではなく対症療法が実施されます。
猫の花粉症の対症療法でもっとも多く使用されているのがステロイド剤です。ステロイド剤は、花粉症などのアレルギー反応をかなり強くブロックしますので、花粉症の症状はしっかりと回復していきます。
しかし、根本的なアレルギーを治しているわけではなく、あくまで症状の緩和を目的とした投与なので、薬をやめるとまた症状が再発してしまいます。
そのため、ステロイド剤を使うときは、その使い方に注意が必要です。長期間使用すると、様々な副作用のリスクが高まりますので、なかなかステロイドなしでの症状の軽減が難しい場合は、抗ヒスタミン剤など他の薬を併用することもあります。
またアレルギー性皮膚炎では、細菌感染も併発しているケースも多く見受けられるので、ステロイド剤に加えて抗生物質を併用する場合があります。
花粉は数ヶ月すぎると飛散が収まるので、時期を過ぎれば症状が治ることがほとんどです。しかし、猫の中には花粉症と一緒に食物アレルギーなど、他のアレルギーも一緒に持っていることが見受けられます。その場合は、花粉の時期を過ぎても症状が残ってしまいます。
■猫の花粉症の予防は、こまめなお掃除が大切です。

猫の花粉症の予防は人間と同じく、花粉を近づけないことが重要です。そのため、猫が暮らす部屋には、花粉の時期は窓を開けないようにする、こまめなお掃除で部屋の花粉を取り除く、空気清浄機を使用するといった対策が必要です。
また、飼い主さんが外出した際に洋服に着いた花粉を部屋に持ち込むこともあるので、そういった面での注意も必要です。
猫の花粉症は、人と同じようにくしゃみや目やに、鼻水などが見られることもありますが、体のかゆみなど、人と異なる症状が見られることも多いです。
近年は精度の高いアレルギー検査ができるようになり、診断しやすくなりましたが、治療は筆者の経験上、対処療法であるステロイド剤が中心となります。
猫も花粉症を予防するには、花粉をお部屋に持ち込まないようにしたり、こまめに掃除したりすることが重要です。
花粉症をはじめ、猫のアレルギーは完治が難しい病気なので、日常生活の中でできる限りケアしてあげるようにしてくださいね。
※ 本サイトにおける獣医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、獣医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。個別の症状について診断・治療を求める場合は、獣医師や各専門家より適切な診断と治療を受けてください。
【関連記事】
※ 飼い主は犬猫の保険に入るべき?気になる「ペット保険」について獣医師が解説
※ これだけは知っておきたい!犬の「免疫」の基本と免疫系の疾患について
※ ただの換毛期じゃないかも…!飼い主さんが気をつけたい犬の皮膚病5つ
※ 日常の音や声、犬にはどう聞こえる?「耳の仕組み」に関するあれこれ
【参考】
【画像】
※ Photo-SD, Tamonwan apaikawee, Katerina Maksymenko, PixieMe, Stock-Asso, SMA Studio, Kiwis / Shutterstock
戻る
みんなのコメント